普及活動のページ レッツ・ゴー・ボウリング! 第25章

宮田 哲郎

(社)日本プロボウリング協会 (社)日本体育学会・体育経営管理部会員

平成19(2007)年8月1日号

浅田 梨奈 2007全日本高校チャンピオン
浅田 梨奈 2007全日本高校チャンピオン
目次
第24章
第23章
第22章
第21章


第20章
第19章
第18章
第17章
第16章
第15章
第14章
第13章
第12章
第11章
第10章
第9章
第8章
第7章
第6章
第5章
第4章
第3章
第2章
新時代2
第1章
新時代1
はじめに

 ボウリング・ブームの社会史(その3)

 「ボウリングの歴史」として始めたコラムを、先月から改題しました。

ボウリングが流行った時代の「社会的な、個人的な理由」を論ずる場と

したいからです。


 今回は、とくに質問の多い「トレンドの終焉」に関する詳しい、研究

論文をお目にかけます。予定では、1960−70年代に起こった米国

の大ボウリング・ブームで米政府の公共投資「ニュー・デイール政策と

ボウリング・ブームの関係」でしたが、これは次回に・・・します。


 レジャー関連業界の一部に、急速に暗雲が垂れ込んできました。

先月、北海道・東北の経営者の方がたと懇談する機会がありましたが

、手詰まり感が強く、社員の意気が上がらないと嘆いておられました。

元気が出ない原因は明らかですが、業界の対策はいかがでしょうか?


 1.急務は、脱トレンド・マーレテイング

 人口構造の変化がボウリング産業に及ぼす影響とは、売り上げの8割

から9割を占めている若者層の急減です。嫌なことを言うようですが、

早ければ2010年頃から表面化して、気がつけば*何の手立てもない

最悪のシナリオとなるのかもしれません。

*例えば 1.ボウリング自体のレトロ化が一気に表面化した場合

       2.業界のブレ、有効な危機回避手段を見つけられない場合

        余暇や遊びに対する大衆の価値観変化に対応する手段が

        講じられない場合:設備・営業コンセプトのリニュアル

      3.現場担当者のマンネリズム、ミス・キャステイングと

        強烈な競合(他業種とは限らない)の出現

 突然の大ブームによって生まれ、いつのまにか半世紀を過ごしてきた

ボウリング産業が急に「生まれ変わる」のは難しいと思いますが、業界

リーダーと現場の強い意志と市場変化に対応する確かな手段とあくまで

続ける根気があれば、危機を脱することができるかもしれません。


 長い間いろいろなご意見を聞いてきましたが、私の結論は脱トレンド

・マーケテイングです。自力で新しいボウラーをつくること、センター

へ多数の人々を招きいれ、ボウリングの真価を体験していただき、地域

におけるボウリング場の役割と貢献を正しく主張することです。


 2.反論に答える!

 私の結論に賛成しない業界人に、しばしば会います。

 いわく、「理屈は分かるが、難しい・・・」と・・・。


 50年も続いたものを、新しい経営スキームに変えることが易しく

ないのは当然です。情熱も知恵もない者は去れ!とまでいう気はない

ものの、少なくともそれでは改革はできないでしょう。


 原点に帰ってトレンドというものについて、よく考えて見ましょう。

次は、以前発表した論文ですが「ボウリング産業におけるトレンド・

マーケテイングの終焉」と題するものです。


 トレンド(流行)の終焉

 流行をテ−マにした心理学的論考は非常に多いが、実証的かつ定量的なものは

非常に少ない。わが国ボウリング・ブームの断片的な評論はあるが、まとまった研究

を目にすることもめったになかった。


一方、米国ボウリング場経営者協議会 BPAA会長をつとめたダン・ヒルマン氏

の協力で、1970−80年代の*米国ボウリング産業について、新しく高度な研究を

入手することができた。

    * Dr.George Allen
    [The Bowling Industry Study] 1986年 邦文訳なし

    *Dr.Robert D.Putnam ハーバート大学政策社会学教授
    [BOWLING ALONE] 2000年
      日本語版あり 「孤独なボウリング」米国コミュニテイの崩壊と再生
                 同志社大学 柴内康文訳 柏 書房 6,800円


 わが国のボウリングが流行現象を起こした理由について考察する貴重な資料と

なったが、更に「流行の深層心理について」筑波大学心理学系ゼミ(松井 豊教授)

における*研究が、最高のヒントとなった。 *1870−80年代。

業界の願望と素朴な疑問、「ボウリングに再びブームはあるのか?」を念頭におき

、次の松井教授の優れたゼミ資料を前にしつつ、近未来の日本ボウリング産業の方向を

探ってみましょう。


 流行の心理

@流行の種類

 服装・スポ−ツ・リクリエ−ション・旅行など、一般大衆の流行は目に

つきやすい。服飾品・靴・流行歌などのほか言葉・俗語・音楽・ヘアスタイル

・人生観・本なども流行しやすい。


心理学者・南 博は、流行は(もの・行為・思想)の三種類があり、表面的

流行ばかりでなく、考え方や感じ方など心の内側にもあると指摘した。


 「消費は美徳」、「やさしさ・癒し」など、社会的・文化的水準の流行は

、時代の雰囲気・風潮であるが、単なる商品や流行歌などでも、必ず

社会的・文化的な時代背景があることを忘れてならない。

個人の流行といえども、その定着には、時代・社会の「大儀名分」が

欠かせないのである。



A流行の本質

 1978−79年、2年間に渡りボウリング産業に甚大な被害を与えた

「インベ−ダ−・ゲ−ム」の推移を見ても、<潜在期−初発−急騰―

ピ−ク−停滞−衰退―消滅期>の5段階があり、流行には一定の周期

がある。


 また、パ−マやテレビのように、消えることなく一般に広まってから

定着するものがある。長期に流行するか、短期に終わるかは、「流行

事物の持つ、本来的な特性(目的・機能など)と需要の度合いによる」

と考えられる。


B流行が消えるとき

 変化と刺激を求め、新しいものを欲しがることが流行心理である。

 安易に流行を求めるのは「主体性がないことの証し」とする心理や

*マスコミや業者の度を越した商業主義への反感もあるが、それでも

「流行に遅れたくない」願望があり、ブームの発生を生む大きな要因と

なっている。

    *ボウリング業界のトレンド志向を思い起こすこと。

 また、流行のごく初期は個性を示す「自己顕示欲や差別化の心理」

が働いているのだが、ブームの最中となると、「皆と同じことをする

安心感・・・」、つまり「批判や孤立から無縁な自分」でいる感じを味わう

ようになる。

 自分だけ突出することを嫌う日本人の「無難を好む性向」を示して

いるのだが、意外にもこれが流行の終焉を示す「サイン」なのである。


C流行をリ−ドするもの (トレンド・マーケテイングの根拠)

 100年前まで、流行とは社会の優位者から劣位者へと、*したたり落ちる

水のようだとする「トリックル理論」が生きていた。しかし、身分や階層差が

ほぼなくなった現代は、ほとんど意味がない。  *trickleしたたり落ちる。


 現代は革新性の高い人物(イノベ−タ−)が流行をつくり、それが女性

や若者であることが多い。流行意識が強く、*「マス・コミやくちコミ行動」

に積極的で、若者たちには生活圏リ−ダ−として「専門情報を尊ぶ」傾向

がきわめて強い。

 *強いマス・メデイア機能を持つ、個人間のインターネット情報が有力化しつつある。


 一方、売り手側企業とそれにスポンサードされたTVなどのマス・コミが、

最初は流行をリ−ドしているように見えるが、大量生産と大量消費に象徴

される、消費型ライフ・スタイルは、もはや時代遅れである。


Dトレンド・マーケテイングの終焉

 今までマス・メデイアが流行をつくり、促進させてきたが、ある飽和点まで

来ると「マス・コミ自身の変節」が起き、逆に衰退方向へ導く、皮肉な現象が

おきてくる。正に「メデイアこそ、流行と消費の王様」である。


 また、*「メデイア・ミックスは流行を長期化」させる機能があるが、

個人が実際に消費行動を起こしたり、流行を取り入れる過程で、マス・メデイア

が果たせる役割は、意外にも30%程度しかないことが分かった。

*例えば、流行小説が映画化され、もとの本が更によく売れたりすること。


 結局、流行の真の担い手は、若者ばかりではなく、

「オピニオン・リ−ダ−と呼ばれる人たち」である。

現在では、オピニオン・リーダーが提案する消費行動の普及率は、およそ

70%以上あるとされている。


 しかし、外部メデイアの情報は、オピニオン・リ−ダ−から「くちコミ」で

広がっているが、若者リ−ダ−に絞って特徴を調べると「感覚的、享楽的な、

単なる目立ちたがり屋」であり、およそ当てにならない人種ばかりだった.

                            *1985年 博報堂調査。


E流行とフアン心理について

 一般に、心理的に魅力を感じさせる人物の流行を「人気」と呼び、それを

支えるフアン心理には親近感と優越感・尊敬と憧れがある。かれらは専門

知識が豊富で、流行行動が日常生活に密着していることが分かった。

高度なフアン、すなわち「マニア」の誕生である。


 3.今月の結論

今後、トレンド・マーケテイングの根拠である若者人口が急減、

私的遊びの総需要が減ってくる。従来マーケテイングの限界点は、

今後の5年間ではっきりと表面化するだろう。


 一方、着々と進行中の「商品としてのボウリングのレトロ化」

対策として、従来にない手法での*リピーター顧客の開拓が必要で

ある。企業理念まるだしの手法をやめて、社会や個人が求めている

ニーズに基づく「提案型のマーケテイング」である。


 業界は早く内・外のコンセンサスを求める一方、現場は早々に

受け入れ準備にかかるべきである。最も有効な方策は、*文科省・

日体協のナショナル・スポーツ・キャンペーンに存在する。


 ここに参画することは、産業の存続にかかわる重大事である。

 業界の一部で言う監督官庁の違いに拘泥せず、業界が一致して

とりかかるべきである。

  *「スポーツ振興法」および
   「スポーツ振興基本計画」2006年改定による普及活動。


(9月の予告)

  米国のニュー・デイール政策(F.ルーズベルト)と

社会・大衆の変化、ボウリング・ブームの発生について。

普及活動のページ「目次」へ 全国ボウリング公認競技場協議会「トップページ」へ