四家秀治の「ナイス!ピンアクション」−11

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●春うららボウリングに行きましょう!

 春休み、土曜日の夕方、とあるボウリング場でのことです。
 にぎやかに談笑しながら6人の女性が入ってきました。
 OLにしては少々若い…学生?とにかく、誰もマイボ−ル、マイシュ−ズなど持っていませんが、ニコニコと楽しそう。6人は、思い思いの服装で、それなりにキマっています。しかし、予想通りと申しましょうか、例外なく、皆、メチャクチャな投げ方でした。

 走り幅跳びの助走のように全力でアプロ−チを走りながらファウルラインの前で立ち止まって「よっこいしょ」と投げるAさん。
 うつむきかげんで自信なさげに歩いてド−ン、と投げるBさん。
 アプロ−チはリズミカルながらリリ−スの瞬間は上半身下半身がバラバラのCさん。
 おしとやかに立ち、おしとやかに構え、ス−つと投げるDさん。
 躍動感に満ちた動きで力強いスイングなのですが、いつもボ−ルが右に流れるEさん。
 逆に、ほとんど助走しないでボ−ルを振り上げるときに身体が左を向いて、ボ−ルも左に流れるFさん。

 私もボウリングやり始めの頃は、こんな風に投げていたのかなぁなどと思いながら見ていると、Cさんが第1フレ−ムで偶然(失礼!)ストライクを出しました。

 まあ、いうまでもなく全員ガタ−率が非常に高いわけですが、Cさんは、このストライクで「6人の中では自分が一番うまい」と思ったのか、それとも元々そういう資質なのか、盛んに「あ〜、惜しい」とか「あそこはもっと右に投げればよかったのに」とか、アドバイスというほどではないにせよ、みんなに声をかけて、ゲ−ムが進行していきます。無論、彼女として、安定感があるわけではありませんから、その後はオ−プンフレ−ムが続きました。

 5フレまで、6人を通じてストライクはこのCさんの1つだけ、スペアはありません。全員のスコアがここまで50に満たず、ゲ−ムは後半へ。
 6フレで、「よっこいしょ」のAさんが待望のストライク、7フレには、Eさんがうまい具合に右に流れずストライク!しかし、ここまできても、未だスペアは誰も取れません。
 8フレ、やつとBさんが4本カウントからスペアをマ−ク。刺激されたのかFさんもスペアです。
 9フレ、Aさん、待望の初スペア、Eさんも続きました。これで、スペアは6人合計で4つ出たことになりますが、8フレまででスコアが80以上になっている人はいません。

 ゲ−ムはいよいよ10フレです。
 オ−プンフレ−ム続きだったDさん、1投目カウント7からやっとの思いで初スペアをマ−ク。でも最後は2本カウントで、73に終わりました。
 10フレではBさんもスペア。スコアを94まで伸ばしました。Fさんは8フレのスペアだけに終わり75。
 さて、チ−ムリ−ダ−のように元気だったCさん、1フレのストライクのあとは9フレまですべてオ−プンフレ−ムで83。しかし、9フレでスペアのAさん、Eさんとともに10フレ如何では100アップの可能性があります。
 その1投目、8フレまでちょうど70のAさんはそれまでよりさらに力が入ってヘッドピンをはずし4本カウント。2投目は1本しか倒れず89でゲ−ム終了。
 7フレのストライクのあたりから除々に投球が安定してきて8フレまで69のEさんは、ボ−ルがヘッドピンに向かっていきます。おっ!と一瞬思いましたが、カウントは8。2投目は「お約束どおり」ピンにさわることなく95でゲ−ム終了。
 さあ、Cさん、なんとしてもここはスペアかストライクで…と思ったのでしょうか、ますます力んでボ−ルは右に流れ、ヘッドピンに当らず4本カウント。2投目は案の定左に流れ4本しか倒れず、終わってみれば全体で3番目の91。
 結局、誰も100に届きませんでした。



 6人合計でストライク3、スペアは6。特徴的だったのは9本スペアが1回もなかったことです。1投目に9本倒れるケ−スはそんなに多くはありませんでしたが、1本残りだと取れる気がしないのか、投げる前からあきらめている様子でした。思わず「1本が一番簡単なスペアなんだよ」と声を掛けたくなりましたが…。
 いや〜、でも、皆ほんとうに楽しそう!ガタ−続きの人が1投目に溝に落ちず、3本倒すと「あたった−、倒れた−」と喜び、ストライクのときには、全員で宝くじでも当ったかのような大騒ぎ。忘れていたボウリングの原点、自分が投げたボ−ルでピンを倒す喜びこそがボウリングの魅力であることを無邪気にボ−ルと戯れる彼女たちは教えてくれました。
 春休み、土曜日の夕方、女6人だけでボウリングに興じるということは、彼氏がいないとか、うまくいかないとか恋愛上の悩みを抱えていたりするのかもしれません。思いっきりストレスを発散させに来ているのだとしたら、彼女たちにとって技術的なことはどうでもいいんだなあなどと思いをめぐらせていたら、2ゲ−ム目が始まりました。6人の投球フォ−ムは1ゲ−ム目と変わりませんが、不思議なもので、今度は序盤から皆、ポツポツとスペアやストライクが出るようになり、全員が100アップペ−ス。メチャクチャな投げ方なりに、感覚がつかめてきたのでしょうね。6フレまで進んだところで、私は、約束していたあるプロの取材の時間になって楽しいウォッチングは終了。プロの取材が終わったとき、もう、6人の姿はありませんでしたので、2ゲ−ム目の結果はわかりませんが、きっと「やった−、100超えたよ−」なんていいながら笑顔一杯で帰っていったことでしょう。
 彼女たちが、「今度一緒にボウリング行かない?面白いわよ!」と仲間を増やしてくれれば、それが一番の普及、振興に繋がるような気がします。そう、堅苦しい技術指導など彼女たちには必要ないのかもしれません。

 リ−グに参加する面白さは、私も理解していますし、マイボ−ル、マイシュ−ズの重要性については言わずもがなです。でも、私がボウリングを始めた頃、あるいはかなり夢中になって1度に10ゲ−ムぐらい投げるようになっても、ハウスシュ−ズ、ハウスボ−ルで十分楽しんでいた記憶があります。それは、ふらっと「ボウリングでも行こうか」と友達同士で誘い合わせて行く楽しさなのです。これは、競技スポ−ツであると同時に大衆スポ−ツでもあるボウリングだけが持つ最大の長所であると思います。
 40年ほど前の大ブ−ムの頃と違い、今はレジャ−が多様化していますが、そんなこととは関係なく、手軽に身体を動かせるスポ−ツの王様はボウリング以外にないことを業界は、今一度見直し、強調すべきでは…?いや、レジャ−が多様化した今こそ、ボウリングの長所をもっともっとアピ−ルすべきではないでしょうか。

 リ−グに依存しているセンタ−が多いのは、安定したレ−ンの稼働率を考える経営側としては当然の論理なのでしょうが、せっかくボウリングをやろうと思って行ったのにリ−グにレ−ンの大半が占領されてできなかった、というケ−スが近年は決して少なくないように思います。そのことで、底辺拡大のチャンスを業界は自ら摘み取っていることもあるのでは?
 センタ−が減っている、ボウリング人口がジリ貧、などという話を耳にする昨今、あの美女6人組のボウリングからそんなことを思った私です。

 春うららかな陽気に誘われて…
 お花見前に、ボウリングに行きましょう!



四家 秀治 (よつや・ひではる)

元テレビ東京アナウンサ− 2011年7月からはフリ−。テレビ東京在職中は、ボウリングの実況を多数経験。東京運動記者クラブボウリング分科会代表幹事と、武部勤衆議院議員が会長であるボウリング評議会の理事を2011年3月まで務めた

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