四家秀治の「ナイス!ピンアクション」−25

 田町ハイレーン外観(提供:JBC)
田町ハイレーン外観(提供:JBC)
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●身体障害者のプロボウラー誕生

 先月に続いてJPBAプロテストの最終結果をお伝えしましょう。

 5月14日、東京の田町ハイレーンで行われた実技テスト二次最終日は、一次より多くのギャラリーで賑わっていました。一次テスト最終ゲームで惜しくも合格点に届かなかった甘糟龍二郎プロ(JPBA23期)の長男、甘糟龍馬さんもお父さんと一緒に観戦に来ていました。甘糟親子の関心は、ジュニアの頃から期待され、その実績から一次免除で二次テストに臨んでいた「ウチの長男はダメでしたが、この娘は絶対受かるでしょう。トップ合格を目指していますから」と龍二郎プロが話していた山田弥佳選手です。
 その言葉どおり、合格ラインをはるかに越えるハイペースでストライクを量産、トップ合格とはいきませんでしたが、堂々2位で、無事二次テストをクリアしました。
 「甘糟プロには、プロとしてのあるべき姿など…私、全然ダメだった、いや…まだまだダメなんですが、あらゆるところを指導していただきました。ほんとうにうれしいです」と山田選手は声を詰まらせながら話していました。ちなみに1位は山田選手と同じ神奈川県でこれまたジュニアの頃から注目されていた学齢で一つ上の小泉奈津美選手でした。

 一次最終ゲームで246を打ち、劇的に突破し「こうなったらぜひ二次も突破してほしいです」と私が先月のコラムで申し上げた久田良江選手は、二次も初日、2日目とボーダーラインすれすれのところにいたのですが、3日目からグングンスコアを伸ばし始め、最終日、一次のときより、傍目にも力みのない投球フォームで着実にスコアメイク。見事合格しました。
同じセンターで投げることが多いという応援に来ていた時本美津子プロ(JPBA7期)が、「あれ(一次最終ゲーム)で勢いに乗ったと思います。すばらしい!」と賛辞を惜しみませんでした。こういう結果は心地いいものです。女子の合格は10人でした。

 さて、二次も一次と同じ、女子48ゲーム、男子60ゲームですので、最終日、やはり早く終わるのは女子。男子に目を移しますと、そこに、右腕をポケットに入れたまま、左腕一本で黙々とピンに向かい続ける選手がいました。
 スコアを見ると、二次テストでなんとパーフェクトを3回!!
 福岡県久留米市からやってきた前田充彦選手です。一次は西日本地区1位で突破。
 その勢いを維持したまま二次最終日に臨んでいたのでした。余裕で60ゲームを投げ切り合格を果たしました。

田町ハイレーン場内(提供:JBC)
田町ハイレーン場内(提供:JBC)

 さっそく記者会見で話を聞きました。
 「17才のとき、交通事故で利き腕である右腕の機能を失いました。それ以来、前向きな気持ちになれないでいたのですが、20才のとき、偶然、テレビのバラエティでボウリングをやっているのを観て、これならできるかもしれないと思って始めたんです。もちろん、初めは悲しいぐらい遅いボールしか投げられませんでした。もともと右腕でもほとんどボウリングをやったことがなかったんで、ほんとうにころころとガターに落ちるばかりでした。それでも平川周プロ(JPBA7期 故人)が熱心に指導してくださり、少しずつ格好が付いてきて、2008年にはプロテストを受験しようというレベルまできました。そこまで5年近くかかりました。ところがテストの1週間前に中指をケガしてしまったんです。とても1週間で治るようなものではなかったので平川プロからは『辞めろ』と言われたのですが、せっかくここまで来たんだから、と受けました。結果はやはり指が痛くて全然ダメで、2日間でアベレージ190に届かずに終わりました。翌年、リベンジとばかりに再挑戦です。しかし、会場が前年と同じセンターだったので、中指のケガは治っているのですが、前年の悪いイメージが頭の中で湧き上がって…、身体が思ったように動かない。いわゆるイップスのような状態になってしまい、またも2日で終わりました。こんなことを繰り返していてもしょうがないので、それから2年は受けませんでした。そして、満を持して昨年、3度目のトライ。今度は自信満々です。ところが、それがいけなかった。初日、レーンコンディションが合わなくて、スコアが伸びなくてもあわてないようにしていました。自信がありましたからね。でも2日目になっても一向にレーンがつかめない。なんとそのまま、またもや2日間30ゲームで190アベに届かずに終わってしまったんです。だから、4回目の今年はとにかく一生懸命投げよう!と心に決めていました。そうしてやっと一次を突破できたんです。二次のパーフェクト3回ですか?あれも、ただ一生懸命投げた結果ですが、特に3回目は、3日目の最終ゲームで、ギャラリーの方も疲れているし、なんとなく全体的に、もうきょうは終わり、というような雰囲気の中で、たまたまストライクが続いたので、よし、ここでもう1回パーフェクトを出せばこの空気を変えて、盛り上げられるかな?なんて思いながら投げていました。出てよかったです。師匠の故平川プロはほんとにプロフェッショナルな方で、ギャラリーを喜ばせることは常に意識していらっしゃっていましたしね。今も、週に1回の平川プロのお墓参りは欠かさないです。今の私があるのは平川プロのおかげですから。私、重度の身体障害者に認定されているんです。だからといって弱々しいボールしか投げられないのはいやなので、とにかく人より速いボールを投げよう!!と思って練習してきました。私ががんばることで身体に障害を持つ人に勇気を与えられたらいいな、とも思いますね」
 しっかりと未来を見つめるように彼はエネルギッシュに語ってくれました。

 すでに地元福岡では彼のことをメディアが取り上げ始めていると聞きます。
 4度目の挑戦ということで多くのボウリング仲間のあたたかい応援もあったそうです。

 男子は、実技テスト免除の藤井信人選手をはじめ、今年40人が新しくプロになりました。無論、彼ら全員に輝ける未来があることを期待したいですが、ボウリングを始めて10年、30才になった新人の前田充彦プロには、とりわけ熱いエールを送りたいと思う私です。

四家 秀治 (よつや・ひではる)


四家 秀治 (よつや・ひではる)

元テレビ東京アナウンサ− 2011年7月からはフリ−。テレビ東京在職中は、ボウリングの実況を多数経験。東京運動記者クラブボウリング分科会代表幹事と、武部勤衆議院議員が会長であるボウリング評議会の理事を2011年3月まで務めた

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