四家秀治の「ナイス!ピンアクション」−29

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●わたしのボウリング・オリンピック論

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピックの開催が決まりましたね。
 同時に、28番目の競技としてレスリングの採用も決まりました。
 当初、2020年の除外対象競技の候補はレスリングではなく某競技(ここでは触れません)ではないかと言われていたため、採用を目指す野球・ソフトボール連盟、スカッシュは、共に有望と思われていたわけですが、レスリングが今年に入って、突如除外対象競技になったことで、情勢はガラッと変わりました。近代オリンピック第1回アテネ大会からの正式競技であるレスリングは再度採用されるよう、即座にルール変更を表明し、IOCへの徹底的な売り込みを図りました。そうなればやはり伝統の力は図抜けており、野球・ソフトボール、スカッシュを圧倒したわけです。

 もともと違う競技団体である野球とソフトボールが、野球・ソフトボール連盟という一つの団体となって必死にオリンピック競技復帰を目指したのは皆さんもご存じでしょう。
試合時間短縮のため、野球は9回ではなく、7回制の実施も表明していました。
 スカッシュも試合時間短縮のためのルール変更、そして見やすい競技にするため全面ガラス張りのコートにするなどこれまた可能な限りのアピールをIOCにしていました。
敗れたとはいえ、この2つの競技団体の「オリンピック競技になるための努力」には(内部で賛否はあるようですが)頭が下がります。
 ひるがえってボウリングは…
 20世紀末から「ボウリングをオリンピックに!」
というお題目のような声は聞こえてくるものの、具体的に今まで何をIOCにアピールしてきたのか?私の勉強不足なのかもしれませんが、よくわかりません。
 世界テンピン連盟には100以上の国と地域が加盟しています。競技人口も決して少なくはありません。また大衆スポーツ、手軽なスポーツの王者なのも明らかですからそれだけでもかなりのアピールにはなるでしょう。

金メダルへのハイジャンプ
金メダルへのハイジャンプ

 ただ…問題は「ボール」なのではないでしょうか?
 そう、このコラムでも私が機会あるごとに申し上げてきた「ボール」です。

 多くの球技は一つのボールを追いかけたり打ったり蹴ったり投げたりして勝負を決めます。そのボールの材質が、仮にさまざまだとしても一つのボールで戦っている以上、その時対戦している選手(チーム)にとってはイコールコンディションです。すなわち、現在オリンピックで行われている球技はすべて、イコールコンディションでの戦いなのです。(一つを除いて…これについては後述します)
 しかし、ボウラーほぼ全員が違うボールを持って同じピンを倒すボウリングが果たしてイコールコンディションで戦っているといえるのか?は、理解されにくい部分ではないでしょうか。
 「ボール」を「競技に使う道具、器具」に置き換えるとどうでしょう。
 例えば陸上競技の投てきは、皆、違う槍、砲丸、円盤、ハンマーを使っていますがそれぞれ重さ、大きさ、材質が決められていますから純粋に強い者、技術の高いものが遠くに飛ばします。棒高跳びのポールはポールの反発係数などが決められている他、長さに決まりはありませんが、力がなければ長いポールを用いて跳ぶことなどできませんから、イコールコンディションでないと言えば言えますが、力がなくても変化の大きなボールを使うことができるボウリングとは少し違います。

 また、フェンシングの剣、アーチェリーの弓や矢、馬術の馬具、射撃の銃、ピストル…etc.などは皆個人の持ち物で違いますが、それぞれの規定をクリアしていなければいけないわけで、これもボウリングのボールほどの違いはないでしょう。
 さて、一つを除いて…というのは次のリオデジャネイロ大会から採用されるゴルフです。
これはもう皆、違うクラブを使うわけで、ボールは規定をクリアしなければいけませんから同じと考えてもいいでしょうが、クラブを皆、同じ物に統一せよ、といってもそれは難しいでしょう。(特に材質)別にゴルフを擁護はしませんがこの競技をイコールコンディションで戦わせるのにはかなり無理があります。

疾風のごとく
疾風のごとく

 ではウインタースポーツはどうかというと、例えばスキーのクロスカントリーでは、雪質によってワックスのかけ方で速度が全然違うといいますから、これはボウリングの
「レーンコンディションによってボールを換える」のと発想は似ています。
また、ボブスレー、リュージュ、スケルトンなどのソリ競技は、もはやマシンで決まる部分がありますから、あきらかにボウリング以上に「道具に頼っている」要素が強いといえましょう。
 まあ、そもそもウインタースポーツの多くはイコールコンディションで戦う事自体が難しい競技です。そのため少しでもイコールコンディションに近づけようとスピードスケートは近年、屋内のリンクが当たり前になってきているわけです。

 こうして見てくると、初めに「球技は、皆イコールコンディションだ」
と申し上げましたが、ゴルフやウインタースポーツは必ずしもそうではないことがわかります。

 もし、ボウリングが本気でオリンピック正式競技を目指すなら(目指さないのなら別に構いません)、ボールメーカーの協力を得て、参加者全員が統一したボールで投げる『世界で最も権威のある大会(優勝賞金の高い大会でもいいです)』を開催し、それを世に広めることがいいのではないかと思います。
 つまり、私が言いたいのは、
「ボウリングはラッキーでストライクが出るからな」とか「なんか皆、違うボールを使っているから競技性が低いんじゃないか?」などという意見を論破し、
「永遠にイコールコンディションでできないゴルフよりも、自然に左右されたり、道具に頼ったりするウインタースポーツよりも、ずーっとボウリングは競技性が高い」ということをアピールすべきだということです。
 元より、ボウリングは競技人口自体、とても多いですから、レジャーのレベルでもなく、ボールに金を掛けた者が優位でもなく、純粋に実力のある者が勝つスポーツであることを示していくことが大事だと思うわけです。

 ボールメーカーの立場がない?利益もない?
『世界でもっとも権威のある大会』のボールは全てのメーカーが協力して作り、そのボールを使わなければ出られないとなれば、全てのメーカーが損はしないと思いますが…。
「それでは自由競争の論理に背くことになる!」
というような意見も当然出てくるでしょうが、そこを突破しなければ、少なくとも世にボウリングの競技性は訴えられないと考えます。

ラストランナー
ラストランナー

 夏季オリンピック28番目の正式競技決定の報を耳にし、そんなことをツラツラ考えた私でした。

 最後にお断りしておきますが、ボールの進化がボウリングの面白さをより大きく、楽しくしたのは間違いありません。私も含め、全てのボウラーは少しでもスコアをアップしたいのです。そのニーズに応えてきたこれまでのボールメーカーの血の滲むような努力には感謝こそすれ否定するつもりは毛頭ありませんので、その点だけは誤解のないようにお願いします。

四家 秀治 (よつや・ひではる)


四家 秀治 (よつや・ひではる)

元テレビ東京アナウンサ− 2011年7月からはフリ−。テレビ東京在職中は、ボウリングの実況を多数経験。東京運動記者クラブボウリング分科会代表幹事と、武部勤衆議院議員が会長であるボウリング評議会の理事を2011年3月まで務めた

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