四家秀治の「ナイス!ピンアクション」−33

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●異色の渡邉航明プロに注目

 昨年11月、日本人が25年ぶりにジャパンカップで優勝しましたね。
 10年目の加藤祐哉プロでした。
 男子プロには散々苦言を呈してきましたので、ここは素直におめでとう!と申し上げたいです。

 日本勢が優勝できなかった過去24年間の大半は、PBA勢の生活を支えるために開催してきたといってもいいぐらい日本勢が上位にすらなかなか食い込めない状況でしたので、加藤プロが優勝しただけでなく、決勝が日本人対決で、上位4人中3人が日本人だったのは特筆モノ、と言えるでしょう。
 2ヶ月前、このコラムで話題にしたジャパン・オープンで男女そろってアマチュア勢に苦杯を舐めたJPBA勢が、意地を見せてくれたのなら、それはそれで大変結構、今年以降もPBA勢に賞金を持っていかれないようがんばってほしいものです。
 さて、優勝した加藤プロはなんといっても素晴らしいですが、すでに業界紙などではかなり取り上げられていますので、今回は準優勝の渡邉航明(かずあき)プロにスポットを当てました。実は大会全体のボウリングの内容は渡邉プロのほうが加藤プロよりいいのです。
 現在のジャパンカップは、参加選手をA、Bの2シフトに分け、予選10ゲームトータルで、各シフト上位32名ずつが準決勝トーナメントに進出でき、5ゲームマッチの準決勝トーナメントで勝ち上がった8人が1ゲームマッチの決勝トーナメントで優勝を争うという方式です。
 渡邉プロはBシフト3位、日本人全体ではトップという文句のない成績で準決勝トーナメントに進出し、ピート・ウェバー、ライノ・ページ、といった新旧PBAトッププロを下して突破。決勝トーナメントでもクリス・バーンズ、予選全選手トップのイージェー・タケットといった、これまた旬のPBA勢を撃破したのです。
 予選Bシフト13位から、たまたまですが、日本人同士の対決も2試合あるなど比較的対戦相手に恵まれた感のある加藤プロよりエネルギーを要したことは間違いありません。(繰り返しますが、それでも優勝したのは加藤プロ。加藤プロがすばらしいのをここでもう一度強調しておきます)

(提供:JPBA)
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 先日、渡邉プロが所属する東京都葛飾区にある四つ木イーグルボウルにおじゃまし、話を聞きました。
 近年JPBAで活躍するのは特に男子の場合、JBCのエリートからプロ入りした選手ばかり。加藤プロはJBCのエリートではありませんが、プロ入りしてからは山本勲プロ、相澤英昭プロといったJBCで名を成した選手と投げる練習環境ですので、違った意味でJBCの色が濃い選手です。
 しかし、渡邉プロには全く違う匂いがします。
 彼はどんなボウラーなんでしょう?
「私、鍼灸を学ぶ大学に通っていました。同級生には鍼で身を立てている人もいます。私も、そのままボウリングに出会わなければ鍼で…ということになったかもしれません。いいえ、鍼でなくとも、父が歯科医ということもあり、なんとなく医療関係の仕事に就きたいと思っていましたからそうなったでしょうね」
 そんな若者が20才の冬、大学の友人と東京都葛飾区にある「ダイヤレーン」でボウリングに興じる機会があり、それがきっかけで、ボウリングに嵌り、そのままダイヤレーンで アルバイト、さらにボールも作って宮田俊輔プロ(43期)の教えを乞うようになったというのですから、これは異色です。そして、大学卒業時、ダイヤレーンがなくなって(2008年に閉鎖)接骨院で働き始めたもののボウリングへの思いは捨て難く、1年で辞め、プロを志すため、同じ葛飾区にある四つ木イーグルボウルで働くようになりました。
「ごく初心者の頃は宮田プロに教わりましたが、いわゆる指導を仰ぎながら上達するというような感じではなく、ほとんど自分で考えてやってきました。私にとって大きかったのは、それまで何かに夢中になるということがなく、初めて夢中になれたのがボウリングだったということでしょうね。だから、プロを志すにしても、四つ木イーグルボウルに勤めながら好きなボウリングでプロとして生きていけるのならそれでいい、というような気持ちでした。賞金で食べていけるほどトーナメント数が多くないこともわかっていましたので」と、渡邉プロはその頃の心境を話してくれますが、そこからわずか1年でプロになったのですから素質はかなりあったといえるでしょう。
「でも、プロになって成績が上がってくるとちょっと考え方が変わり、最近はもっと高い目標を持ちたいという気持ちになってきていますし、今年はアメリカのケーゲルトレーニングセンターに行ってボウリングをしっかり学んだら?と勧めてくださる人もいます。今回のジャパンカップの結果から私がPBA勢より強いだなんて、もちろん思ってはいません。日本のレーンコンディションは、アメリカとは違っていわゆる幅が広いと思うんです。PBA勢とほんとうの勝負をするなら、幅が狭いと言われるPBAのコンディションでスコアメイクできるだけの技術を身につけなければいけない。できることならそういう練習は積みたいですね」ほとんど自己流でここまでのプロになった人ですが、PBAとの差もしっかり理解しています。

(提供:JPBA)
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 現在の渡邉プロの練習量は、だいたい1週間20〜30ゲーム程度。これはプロとしては少ないでしょうが、センター勤務の、いわゆる多くのサラリーマンプロボウラーとしては平均的と言えるかもしれません。生活もかかっているわけですから、この生活パターンがとても大事なのもわかります。でもこれではなかなか、飛躍的な上達は難しいと考えるのが普通でしょう。それでも「私はプロ4年目ですが、プロ入り当時と今の投球フォームを映像で見比べると随分変わってきています。具体的には前に突っ込む感じだったのが、伸び上がる感じになったことでしょうか。安定感も随分出てきているし、球威も増しているのが自分でわかりますね」
 多くはない練習量でも着実にレベルアップしてきたというのは本人なりの工夫もあってのことだろうと思います。

 私はこのコラムで、川添奨太プロへの期待を何度となく述べてきました。それは、川添プロが一番世界と戦うには近いレベルなのではないか?と思っていたからに他なりませんが、渡邉プロは、実は川添プロと同期、ライセンスナンバーが川添プロより一つ大きいだけ。つまり、49期では川添プロがトップ、渡邉プロが2位で合格しているのです。
「もちろん、川添プロのことは常に意識しています」と渡邉プロも力強く語ります。
 JBCのエリート出身である川添プロの対極に位置するタイプである
 自己流叩き上げの渡邉プロ。
 こういうライバル関係が、日本プロボウリング界発展に繋がればいいな、
と、つい、報道する立場の人間は勝手に図式を作ってしまうのですが、
今年、渡邉プロが大いにブレイクしたとき、それは、
正に
“世界を相手に戦うライバルストーリー”
に発展する可能性があります。

「いやあ、でもあのIピンは取らなきゃいけなかったですねえ」
とジャパンカップ優勝目前の9フレIピンカバーミスにより大魚を逸したことは、大きな悔いとして残っているようです。
しかし
「あれ以来、このセンター(四つ木イーグルボウル)では、Iピンをミスすると
『ナベ(渡邉)ッちゃった』なんて皆、言います」と傍らにいた同じく四つ木イーグルボウル所属の某プロが茶目っ気たっぷりに話してくれると、それを聞きながら一緒に笑い飛ばしてしまうところが彼の人柄であり、魅力でもあります。
もちろん、またトーナメントの同じような場面でIピンカバーミスをしたら、それはシャレにはなりませんが…。
 皆さん、異色の渡邉航明プロにぜひ、注目してください。


四家 秀治 (よつや・ひではる)


四家 秀治 (よつや・ひではる)

元テレビ東京アナウンサ− 2011年7月からはフリ−。テレビ東京在職中は、ボウリングの実況を多数経験。東京運動記者クラブボウリング分科会代表幹事と、武部勤衆議院議員が会長であるボウリング評議会の理事を2011年3月まで務めた

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