四家秀治の「ナイス!ピンアクション」−43

 前田充彦プロ
前田充彦プロ(提供:JPBA)
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●快挙!前田充彦プロ

 10月に、日本プロボウリング協会(JPBA)男子プロの新人戦が行われました。
 優勝は、皆さんもご存じ、昨年プロ1年目にして全日本選手権を制した藤井信人プロ。すでに日本一なんですから、新人戦に勝つのも何ら不思議ではありませんね。
 さて、その藤井プロと新人戦で優勝を争ったのは…
 これまた、昨年プロ入りした2年目の前田充彦プロでした。

 前田プロについては、利き腕である右腕の機能を交通事故で失いながら、左腕一本で気の遠くなるような努力を積み重ね、
『身体障害者のプロボウラー誕生』
ということで、昨年、このコラムで取り上げさせていただいたことを覚えている方もいらっしゃるかと思います。

 この結果について、私が申し上げたいことは大きく分けて3つあります。

 まず、一つは、誰もが右か左か(両手投げもありですが)で投げるとはいえ、日常生活では両手を使える他プロに対し、左腕だけでトーナメントに挑戦するのはそれだけでハンデですが、前田プロはそれを乗り越え、準優勝したということ――これは、讃える言葉がみつからないほどすばらしいことです。快挙と言っていいと思います!
 プロ資格を得てから、前田プロは
「インストラクターという立場にもなり、週1回はボウリング教室も所属の久留米ユーズボウルで開いていますし、ボウリングに対する見方が変わりました」
だそうです。
 また、
「それまでは、完璧なストライクばかりを目指していたのですが、結果的にストライクならOKというような考え方にもなり、精神的に楽にボウリングに向き合えるようになったと思います。それが新人戦でも好結果につながったと思いますね」
と、あくまでも謙虚に話してくれました。
 プロテスト合格時以来、久々に前田プロの声を聞きましたが、ボウリングと向き合っている姿勢は、何ら変わっていない印象で、うれしくなりました。

 次に、申し上げたいのは、このすばらしいプロスポーツ選手の存在について、メディアは全くといっていいほど取り上げていないということです。
 ボウリング界が、もっと言えばJPBAが、彼の存在を世間にアピールしようとさえしないのも私には理解できません。
 1980年代、90年代のことですが、アメリカ野球界に、先天的に右腕の手首から先がないという障害を持ちながら、アメリカのソウルオリンピック金メダル(1988年、当時、野球はオリンピックの公開競技)獲得に貢献し、メジャーリーガーとしても大活躍したジム・アボットという投手がいました。 
 彼は来日もし、大変な騒ぎになったことは一定年齢以上なら覚えていらっしゃる方は多いでしょう。私自身、手首から先がない右腕にグラブを引っかけるようにして左手でボールを投げるや否や、すばやくグラブを左腕にはめて捕球動作に入る器用さに感動したものです。
 しかし、失礼ながらアボット投手は大変なハンデがあったとはいえ、利き腕で投げていたわけですから、前田プロはその上をいくすごさだと私は思います。
 2020年東京オリンピックと同時に開催される東京パラリンピックに高い関心が集まっているように、近年障害者スポーツについて、メディアは取り上げる機会がとても増えているのに、どうして前田プロについては?という気持ちにもなります。
 前田プロ自身も「私ががんばることで、身体障害者の方々の励みになれば」と
報道されることを拒んでいるわけでもなんでもないだけに、残念でなりません。
 前田プロの地元、福岡では少しずつ彼の知名度が上がっているようにも聞きますが、誰もやらないなら、私が(このコラムぐらいしかありませんが)これからも前田プロのすばらしさを発信していこうと思います。

 3つめは、男子プロの情けなさです。
 新人戦が、仮に左有利のレーンコンディションだったとしても、前田プロは日常生活のすべてを利き腕ではない左腕だけでやらなければならないというハンデがあります。
 五体満足で、しかも利き腕で投げていて…など健常者のプロは、間違いなく前田プロよりはるかにいい条件で大会に臨んでいます。
 今年の新人戦は合計73人のプロが出場したわけですから、藤井プロ以外の新人戦に出場した71人のプロには猛省を求めたい気持ちです。
 がんばればできないはずはないことを前田プロが証明しているんですから。

ラウンドワン南砂店 外観ラウンドワン南砂店 場内
ラウンドワン南砂店 外観・場内(提供:JBC)

 ・・・と、そんなことをツラツラ考えながら観た先月のジャパンカップは、KPBAのパク・キョンシンが優勝しました。KPBA勢初優勝でした。
 ベスト8にはPBA4人、KPBA2人、JPBA1人(準優勝の石原章夫プロ)、そしてもう1人は高校生の宮澤拓哉選手でした。活きのいいJPBAの選手では、唯一、前述の藤井プロが準決勝トーナメントの3回戦でパーフェクトゲームを達成するなどして、PBAのクリス・ローシェッターと死闘を演じて敗れ9位タイになったのが目立ったぐらいでした。
 25年ぶりに日本人優勝者が誕生した昨年とは違い、一昨年までの“いつもの”ジャパンカップに戻ってしまったかのようです。日本男子の今年は期待の1年でしたが、結果的には尻すぼみの印象です。

さて…
 先月末男子、今月は女子の全日本選手権(女子はJLBCのプリンスカップもありますが)で、JPBAの2014年はとにかく終わります。

 来年、男子も女子もJPBAはトーナメントが減ると言われています。(言われているだけで、現実には減らないといいとは思いますが)
 私が年初来申し上げてきたインターナショナルボウリングチャンピオンシップス(IBC)も、全く復活の兆しはありません…が、一方でジャパンボウリングプロモーション(JBP)が、DHCをスポンサーに新たな動きを見せていて、来年早々に、総額2千300万円、優勝賞金500万円のトーナメントを開催します。
 日本におけるPBAの公認事業代理を行う会社であるJBPが目指すものは何なのか?
 私は、同じくDHCがバックについていて昨年末解散したLBO(日本女子ボウリング機構)の二の舞にならなければ…と少々心配です。

 福岡・久留米から前田プロがさわやかな風を届けてくれたのはうれしいことでしたが、
結局、2014年もボウリング界の問題は根本的な部分では何一つ解決されず、不安要素ばかりが増していった印象です。そして、それはボウリング界の人間だけが知っていることで、世間一般の方々は、何も知らない…。

 私の発言もどうしても過激になってしまいますが、ボウリング界の幸せな未来を祈る気持ちからであるということだけは、どうかご理解いただきたいと思います。

 では、皆さん、来年もよろしくお願い致します。

四家 秀治 (よつや・ひではる)

四家 秀治 (よつや・ひではる)

元テレビ東京アナウンサ− 2011年7月からはフリ−。テレビ東京在職中は、ボウリングの実況を多数経験。東京運動記者クラブボウリング分科会代表幹事と、武部勤衆議院議員が会長であるボウリング評議会の理事を2011年3月まで務めた

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