台所から考える「いのち」−4

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●台所から考える「いのち」 料理研究家 辰巳 芳子 氏 1924生

 10年先には大変なことになります。気象が変動し、干ばつや熱波による米国や南米、豪州の凶作がじかに日本の食卓に及ぶ時代。日本も南太平洋の気候になってきた。むかしは真夏でもそうそう32度は超えなかった。気候激変に応じた食の確保策はだれも考えていない。風土にあった食材を料理して食べていないから、日本の男はナヨナヨしてきた。若い男性のえりあしなんてスーッとしていて、見るからに頼りない。
 しかも農業者が減りすぎている。いま日本の農業を担う人々は平均65歳。10年先にはもう働けない。そして農業高校を出ても農業で食べていけない国になりつつある。30%台の食料自給率は異常です。サッチャー英首相は奮闘して(カロリーベースで)70%へ戻した。日本の政治家はだれも危機感をお持ちじゃない。特に穀物が危機的。無策が続けば、10年後に日本は食で行き詰まります。

 食の根幹について外国と交渉する以上は、逆手に取るくらいの姿勢で臨んでほしい。逆手に取って日本のおいしい農産物や魚介類をちゃんと守り、輸出を延ばすところまで持っていけるはずです。
 私はずっと各地の農産物を守る運動を続けてきた。動物性たんぱくに依拠しすぎた生活はあやうい。牛肉のBSE問題、鶏肉の鳥インフルエンザが深刻になる前から、大豆100粒運動というキャンペーンを始めました。小学生が1人100粒をまき、育て、収穫する。増産のためじゃない。大豆なら将来の日本を助けてくれるから。運動10年、小学生3万人が大豆に親しんでくれた。国の立て直しには、こういう具体的で無私無欲の農業施策が欠かせません。

 魚介類も心配です。日本人は農耕民族であり、海洋民族でもある。海の幸なしでは生きていけない。福島のアイナメが(規制で)食べられなくなって悲しい。福島の事故の何年も前から心配していた。青森県の六ヶ所村で核燃料の再処理が行き詰まったと知ってからですね。もし核物質が海や土を汚染したら、見た目は普通の食品でも住民はどれひとつとして食べられなくなると。実際に大きな事故を起こした日本政府が原発を外国に輸出するなんて。買う方もどうかしていないでしょうか。

(おわり)

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